以前からお伝えしているとおり、2018年6月1日より病院ウェブサイトも規制対象とする新たな医療広告ガイドラインが施行されました。
以降、病院ウェブサイトの内容がガイドラインに抵触している場合は、是正命令や罰則の対象となります。
医療機関等の広告規制が見直された背景や禁止される広告の主な内容については、以前の記事でご説明しています。
「新医療広告ガイドライン ウェブサイトの規制はどうなる(1)」
「新医療広告ガイドライン ウェブサイトの規制はどうなる(2)」
要件を満たしたウェブサイトに適用「広告可能事項の限定解除」とは?
医療広告ガイドラインでは、「虚偽広告」や「比較優良広告」などと並び、「広告が可能とされていない事項の広告」が禁止されています。
ガイドラインでは広告可能な事項について、診療科の表記から医師の資格名まで細かく規定されており、これに準じた場合、ウェブサイトで広告できる事項はかなり制限されます。
しかし、患者自身が情報を求めて閲覧するウェブサイトを、看板やチラシなどと同じ内容で規制してしまうと、患者が望む内容を入手できなくなるおそれがあります。
そこで、新たな医療広告ガイドラインでは、「広告が可能とされていない事項」であっても、一定の要件を満たせば広告が可能になる「広告可能事項の限定解除」が導入されました。
ガイドライン施行を控えた5月31日、厚生労働省の「第9回医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会」が開催され、この限定解除についても具体例が提示されました。
まず、「広告可能事項の限定解除」の要件について見てみましょう。
- 医療に関する適切な選択に資する情報であって患者等が自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイトその他これに準じる広告であること。
- 表示される情報の内容について、患者等が容易に照会ができるよう、問い合わせ先を記載することその他の方法により明示すること
- 自由診療に係る通常必要とされる治療等の内容、費用等に関する事項について情報を提供すること。
- 自由診療に係る治療等に係る主なリスク、副作用等に関する事項について情報を提供すること。
つまり、問い合わせ先として電話番号やメールアドレスが明記されており、自由診療の広告が含まれる場合は費用やリスクについてしっかり情報提供がされていれば、「広告可能な事項」以外の情報についても広告できる、ということになります。
限定解除される広告の具体例
例1:専門外来
たとえば、「がん免疫療法専門外来」という表現は、広告が可能な診療科名と誤認を与える表現のため、ガイドラインでは広告できないことになっていますが、限定解除の要件を満たしたウェブサイトでは掲載可能です。
例2:治癒率などの数値
広告を発信する病院での死亡率や術後生存率・治癒率についても、要件を満たしたウェブサイトでは掲載可能です。ただし、生存率の高さなどを過大にアピールした場合は誇大広告として禁止されますし、客観的に実証できる根拠を示す必要があります。
例3:患者の体験談
治療内容や効果に関する患者の体験談の掲載は全面的に禁止されましたが、病院の外観や眺望など治療内容や効果に関係のない体験談については、限定解除の要件を満たしたウェブサイトでは掲載できます。
ただし、前回ご説明したとおり、医療法第6条で禁止されている虚偽広告・比較優良広告・誇大広告は要件を満たしたウェブサイトでも広告できません。
前述の検討会では、これらの広告が可能となる情報の基準がわかりにくい、という指摘もあり、厚労省では今後、事例と対応を盛り込んだQ&Aを順次出していく方針とのことです。
新医療広告ガイドラインの施行により、現状ウェブサイトのコンテンツチェック・修正は必須となりましたが、患者が求める情報まで削除することになってしまっては本末転倒です。必要な要件を満たして、患者にとって有用な情報は引き続き掲載できるよう、努めていただきたいと思います。