2018年4月の診療報酬改定で、オンライン(遠隔)診療が診療報酬で評価されました。内容的には対象となる疾患やケースが限定的であったため、一気にオンライン診療が進むかといえば疑問符がありますが、いずれにしても新たな診療スタイルの道が誕生したと考えると、大きな変化であったように感じます。
また、オンライン診療システムは、すべてがクラウド型のシステムです。2010年の医療分野のクラウドが解禁されてから、7年が経過し、多くのシステムがクラウド化に進んでいます。そこで、今回はクラウド時代のネットワークトラブルに対して、どのような準備が必要かを考えてみます。
医療機関でIT化が進まない理由
診療所のIT化がなかなか進まない理由のひとつに、IT担当者がいないことがあげられます。これは診療所だけではなく中小規模の病院にも当てはまる共通の課題ではないでしょうか。そのため、わたしどもコンサルタントが、診療所のIT化について支援するとき、窓口はほとんどが院長となります。特に電子カルテの導入は、院長がメインで対応いただくことが多いように感じます。
従来、電子カルテの導入の際にかかる費用として、パソコンなどのハード費用、電子カルテなどソフト費用、そして手厚い導入サポート費用がセットとなっていることがほとんどでした。これは、IT担当者がおけない診療所にとっては、やむを得ない費用であったと感じます。つまり、診療所におけるIT担当者は電子カルテメーカー(代理店を含む)のスタッフが担っていたと言えるでしょう。
様々なシステムトラブル
電子カルテなど診療所のIT化において、システムなどのトラブルのほかに、パソコンなどハードのトラブル、院内のLANのトラブル、そしてネットワークのトラブルが考えられます。ハードやソフトのトラブルについては、月額の保守料を支払って電子カルテメーカーなり、その代理店に委託するのが一般的でした。一方で、ネットワークトラブルについては、ネットワークを敷設した地元の業者が担当してきました。
今後は、オンプレミス型(院内にサーバを設置するタイプ)の電子カルテから、クラウド型の電子カルテが進むにつれて、ネットワークのトラブルの比重は増えていくことが予想されます。また、様々なトラブルの対応を自前で行う必要も増えていくことが予想されます。
ITトラブルにどのように備えるか
これらのトラブルに備えるためには、「自院でIT担当者を雇用する」か、「外部のサポート専門企業に依頼するか」のどちらかを選ぶ必要があります。前者はある程度規模が大きい場合は、可能でしょうが、規模小さい場合はどうしても「兼務」として誰かが担当せざるを得なくなります。結局は、技師さんか、院長自らが担当することになってしまうのではないでしょうか。
しかしながら、兼務で対応する場合、実際にトラブルが発生した時、その担当者はかかりっきりになってしまうため、本来の業務は全くできなくなってしまいます。今後の様々なトラブルを考えると、兼務でIT担当者を担ってもらうのは、大きなリスクになるように感じます。クラウド化が進むと、ネットワークが止まるだけで、システムが動かなくなる(電子カルテが止まってしまう)、つまり診療ができなくなる恐れがあるためです。
このようなことを考えると、外部の専門企業に委託を行い、常にトラブル監視をしてもらうことをお勧めします。クラウド時代には、トラブルを事前に察知し、回避していくような対応が重要になるのです。