すでにご存知の方も多いと思いますが、2017年6月に成立した医療法改正にともない、病院・クリニックなどのウェブサイトが「医療広告ガイドライン」の規制対象となります。

これまで、病院などのウェブサイトに関するガイドラインとしては「医療機関ホームページガイドライン」というものがありました。このガイドラインは「自主的に対応することが望ましい指針」といった性質のもので、法的な拘束力はなく、刑事罰の対象でもありませんでした。

ですが、医療法の改正により医療機関のウェブサイトが広告規制の対象となることで、新しい「医療広告ガイドライン」が策定され、これに違反した場合は是正命令を受けたり、刑事罰に問われたりする可能性も出てきました。

なぜ今、医療広告ガイドラインによって病院ウェブサイトが規制されるのか

なぜ今までウェブサイトが規制対象外だったかというと、従来の医療広告の要件のひとつに「認知性」というものがあったからです。「認知性がある」とは、とくにそれを見ようと意識しなくても目に入る状態にあること、具体的にはテレビCMや看板などが該当します。

病院のウェブサイトは、ユーザーがその病院サイトへのリンクをクリックしたり、その病院や関連する疾患について検索したりといった能動的な行為があってはじめて目にするものなので、一般の人に対する「認知性」はないとされ、規制の対象ではなかったのです。

しかし、2017年に改正された医療法では、この「認知性」が医療広告の要件から外されます。
改正の背景には、主に美容医療サービスを提供するクリニックなどのウェブサイトの内容に関して、虚偽または誇大広告などのトラブルが年々増加していることが関係しています。ウェブサイトに掲載されているBefore・Afterの写真と治療結果がまったく違ったり、記載よりも高い料金を請求されたりといったトラブルです。

こうした不適切な記載について行政が指導しても、従来のガイドラインには法的拘束力がなかったため、なかなか是正されないという問題がありました。
そのような現状があるため、病院やクリニックのウェブサイトも、法的拘束力のあるガイドラインの規制対象とする必要があったのです。

医療広告ガイドラインではX(Twitter)やブログも規制対象となりうる

具体的な規制対象や禁止される広告内容については現在も策定の最中ですが、2017年10月、11月に開催された「医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会」では、医療機関の公式Twitterアカウントやブログに関しても規制の対象になりうるという見解も示されています。

また、消費者に広告と気づかれないように行われる、いわゆるステルスマーケティングについても、「医療機関が広告料等の費用を負担」などの便宜を図っている場合は広告として取り扱う、という記載が新ガイドライン案にすでに盛り込まれています。口コミサイトやランキングサイトなども、特定の医療機関への誘導を促す目的で、医療機関が費用を支払い作成している場合、規制の対象になりうるということです。

禁止される広告の内容については、従来のガイドラインをベースに修正・追加・削除が行われます。

旧ガイドラインから引き継がれる規制内容

まずは従来の医療広告ガイドラインや「医療機関ホームページガイドライン」などでも禁止されており、新ガイドラインでも引き続き規制される内容からご説明します。
現在、「医療機関ホームページガイドライン」に準じて制作しているという方も多いと思いますが、前回お話したように新ガイドラインが施行されると罰則付きでの禁止になりますので、改めてご確認ください。

1.虚偽広告

事実と異なる情報、たとえば「絶対安全な手術です!」のような医学的にありえない表現は当然禁止されます。また、「最新の治療です」という表現も、より新しい治療が定着したと判断される場合やその治療が定着して十数年が経過している場合などは、虚偽広告に該当する可能性があるので注意が必要です。

2.比較優良広告

「他の病院やクリニックなどと比較して優れている」と宣伝する広告です。
「最高の医療」や「日本一」などの表現は、事実であっても禁止されます。
「○○の治療では日本有数の実績を有する病院です」「県内一の医師数を誇ります」など、比較的規模の大きい病院ウェブサイトではよくある表現ですが、これらも禁止となります。

3.誇大広告

提供する医療の内容や施設について、事実より良いものであると印象付けるような広告も禁止されます。たとえば、医師数について「○年○月現在」と添えて記載した場合でも、その後医師数が大きく減少した場合は誇大広告として扱われます。
また、「病人が回復して元気になるイメージイラスト」なども、必ず回復すると誤認させるおそれがあるため禁止となります。制作会社に素材の選定などを任せている場合、注意が必要です。

その他、病院や医師について「雑誌や新聞で紹介された」と表記したり、治療法などについてガイドラインに沿わない内容の新聞記事を引用したりすることも原則禁止とされています。
公序良俗に反する内容も禁止されますが、この点については規制される内容を掲載している医療機関はまずないことと思います。

患者の体験談が全面禁止に

新たに盛り込まれた内容としては、患者の体験談や「ビフォーアフター」の写真掲載についてがあります。

患者の体験談については、禁止広告として「患者等の主観又は伝聞に基づく体験談の広告」と明記されており、全面的に禁止となりました。「患者の声」「治療体験談」などは今後病院サイトには掲載できなくなります。
患者が口コミサイトに書き込んだ内容は、広告とは見なされず規制の対象外ですが、医療機関から患者に見返りとして報酬を渡していた場合は規制対象となります。

「術前・術後写真」、いわゆるビフォーアフターについては、こちらも全面的に禁止される見通しでしたが、条件次第で掲載が可能になりました。費用や副作用、治療のリスクなど治療内容について詳しい説明があれば規制の対象外となり、掲載が可能です。乳房再建など、イメージの提供が重要な治療に配慮した形です。

以上、ほとんどの病院サイトで大なり小なり内容の修正が必要な規制内容となっていることと思います。新ガイドラインが適用される予定の2018年6月までに、禁止項目についてウェブサイトを見直しておきましょう。

要件を満たしたウェブサイトに適用「広告可能事項の限定解除」とは?

医療広告ガイドラインでは、「虚偽広告」や「比較優良広告」などと並び、「広告が可能とされていない事項の広告」が禁止されています。

ガイドラインでは広告可能な事項について、診療科の表記から医師の資格名まで細かく規定されており、これに準じた場合、ウェブサイトで広告できる事項はかなり制限されます。
しかし、患者自身が情報を求めて閲覧するウェブサイトを、看板やチラシなどと同じ内容で規制してしまうと、患者が望む内容を入手できなくなるおそれがあります。

そこで、新たな医療広告ガイドラインでは、「広告が可能とされていない事項」であっても、一定の要件を満たせば広告が可能になる「広告可能事項の限定解除」が導入されました。
ガイドライン施行を控えた5月31日、厚生労働省の「第9回医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会」が開催され、この限定解除についても具体例が提示されました。

まず、「広告可能事項の限定解除」の要件について見てみましょう。

  1. 医療に関する適切な選択に資する情報であって患者等が自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイトその他これに準じる広告であること。
  2. 表示される情報の内容について、患者等が容易に照会ができるよう、問い合わせ先を記載することその他の方法により明示すること
  3. 自由診療に係る通常必要とされる治療等の内容、費用等に関する事項について情報を提供すること。
  4. 自由診療に係る治療等に係る主なリスク、副作用等に関する事項について情報を提供すること。

つまり、問い合わせ先として電話番号やメールアドレスが明記されており、自由診療の広告が含まれる場合は費用やリスクについてしっかり情報提供がされていれば、「広告可能な事項」以外の情報についても広告できる、ということになります。

医療広告ガイドラインで限定解除される広告の具体例

例1:専門外来

たとえば、「がん免疫療法専門外来」という表現は、広告が可能な診療科名と誤認を与える表現のため、ガイドラインでは広告できないことになっていますが、限定解除の要件を満たしたウェブサイトでは掲載可能です。

例2:治癒率などの数値

広告を発信する病院での死亡率や術後生存率・治癒率についても、要件を満たしたウェブサイトでは掲載可能です。ただし、生存率の高さなどを過大にアピールした場合は誇大広告として禁止されますし、客観的に実証できる根拠を示す必要があります。

例3:患者の体験談

治療内容や効果に関する患者の体験談の掲載は全面的に禁止されましたが、病院の外観や眺望など治療内容や効果に関係のない体験談については、限定解除の要件を満たしたウェブサイトでは掲載できます。

ただし、前回ご説明したとおり、医療法第6条で禁止されている虚偽広告・比較優良広告・誇大広告は要件を満たしたウェブサイトでも広告できません。

前述の検討会では、これらの広告が可能となる情報の基準がわかりにくい、という指摘もあり、厚労省では今後、事例と対応を盛り込んだQ&Aを順次出していく方針とのことです。

新医療広告ガイドラインの施行により、現状ウェブサイトのコンテンツチェック・修正は必須となりましたが、患者が求める情報まで削除することになってしまっては本末転倒です。必要な要件を満たして、患者にとって有用な情報は引き続き掲載できるよう、努めていただきたいと思います。