つなげるCASE002
菊池 亮様かける峯 啓真様2017.04.12 公開IT化は現場の不便を解消し、
新しい医療スタイルを築いてゆく

写真: 菊池亮様
Fast DOCTOR
代表 菊池亮様
兼務 帝京大学医学部付属病院 整形外科
ホームページ http://fastdoctor.jp/
写真: 宮本 研様
株式会社シェアメディカル
代表 峯啓真様
ホームページ https://www.sharemedical.jp/

場所を選ばずリアルタイムに
情報を共有できるから、
医療現場の関係性が円滑になる

菊池先生

東京23区において、Fast DOCTOR(ファストドクター)という往診型の夜間救急クリニックを提案しています。自宅にいながら診療が受けられるという新たな選択肢です。この背景に、夜間は、2次救急、3次救急病院しか開いておらず、大病院に患者さんが集中し過ぎてしまっている構図があります。これは医療スタッフ、患者さん双方の疲弊を招きますから、現場の環境を改善するため、このサービスを立ち上げようと考えました。

峯さん

「(医療が)つながる」をコンセプトにMediLine®という医療従事者向けのチャットサービスを行っています。これまで医療者がつなることができるというコンセプトを持ったサービスが意外となくて、民間の無料のSNSを利用することへの抵抗感から、あまり使われてきませんでした。そこで、医療者だけのクローズドなサービスを開発しようと考え、スタートしました。

峯さんは、3.11の東日本大震災が大きな転機となったそうですが。

峯さん

わたしは東日本大震災からキャリアデザインが変わりました。それまでは医療ITを強力に推進する立場で、電子カルテが当たり前の社会が来ると考えていました。しかし震災では、携帯も使えず、何もかもがまっさらになってしまうということに憤りを感じました。患者さんは薬すらわからない、診断書もない、そんな状況でアナログ(紙)の重要性を再認識させられたということを聞いて、ITだけではないなと感じました。アナログ・デジタルにかかわらず、どんな事態でも使えるものが必要なんだと考えるようになりました。そこで、(ネットワークがつながらない)オフラインでも使えるものと考えるようになったのです。

画像: MediLine®について

MediLine®:機微な医療情報を医療者がオンラインで安全にやりとりするために専用に設計された、株式会社シェアメディカルによるメディカルメッセージングサービス。
MediLine®についてはこちら

Fast DOCTORではかなりITを活用されているようですが。MediLine®を導入したきっかけは?

菊池先生

医療情報を適切に管理する必要性を感じたことがきっかけです。セキュリティの観点から、医療現場ではメールや無料のSNSといったオープンなシステムは使えません。クローズドな環境でリアルタイムに情報共有ができるシステムを探していました。そのような要件に合致したのがMediLine®でした。

夜間専門のクリニックは珍しいスタイルですね。

菊池先生

本来ならクリニックがもっとあっても良いように思います。
救急外来に訪れる患者さんの内訳を見てみると、実に70%が軽症患者と言われます。小児では90%にも上り、全ての患者さんが大病院に集中する現状は、極めて不自然ではないでしょうか。

写真: MediLine®について語る菊池先生

MediLine®を導入して、どのような効果を感じますか。

菊池先生

MediLine®を導入したことで、チーム間のコミュニケーションが円滑になり、関係がより密になったと思います。これまでは連絡を取る方法がそれぞれバラバラで、それらを寄せ集めて何とかコミュニケーションを図っていました。コミュニケーションをMediLine®に統一したことで、医師、看護師、ドライバーそしてクラークなど、医療チームが一体になりました。さらに情報共有の場として法的に担保されている。非常に安心感がありますね。

峯さん

MediLine®の導入で、チーム間の距離が縮まる。関係がフラットになるということを利用いただいているお客様からよくお聞きします。医療従事者はスペシャリストの集団で、ヒエラルキーも生まれやすいのですが、MediLine®の中はその関係がなくなるようです。フラットに話ができる。これはまだあくまで仮説ですが、その先にあるのは、職場環境が良好になって、離職率が低下したり、スタッフの定着につながっていくのではないかと思います。

IT化の普及がもたらす、
新しい医療スタイルの確立

Fast DOCTORもMediLine®も新しい医療スタイルへの挑戦と感じますが…。

菊池先生

限られた人材の有効活用という目的もあります。
数多くの病院が、当直医を据えて患者さんの急病に備えて待機していますが、全ての専門科が揃っているところは大学病院クラスの大病院に限られ、ほとんどは内科、外科といった一科当直で、小児科やマイナー科には対応できないことも多く、うまく機能しきれていない部分があります。それならば、夜間診療に特化した組織を作って、往診という形で供給するほうが効果的ではないかと考えました。バラバラのリソースを統合し再分配していく。そうすることで医療サービスも効率化できるのではないかと考えます。これはFast DOCTORをスタートするときに考えたことです。

峯さん

これからは、菊池先生のように医療にも経営マインドが必要だと思います。経営マインドをもって、医療サービスを再構築することで、効率化が図れるし、適正な報酬も得られる。面白い効果的なアイデアやサービスに資金が集まる仕組み、たとえば、「MEDITECH(メディテック)」という市場を作れればと思います。

写真: 菊池先生と話し合う峯さん
菊池先生

医療はそもそも「不便」なんですよね。これまでは、それでも何とかなったので、変わってこなかった。一番の不便は情報共有です。最近やっとその「不便さ」に気づき、改善したいというドクターが増えてきたのだと思います。

医療が様々な不便さを改善し、ハードルを下げる効果があるのですね。

菊池先生

それは間違いないですね。ITは医療者の物理的な不便さを解消し、心のハードルさえも下げていると思います。MediLine®がスタッフ間の関係を近くしてくれています。本当にありがたいですね。

峯さん

医療者間の情報格差が様々な問題を引き起こしているのだと思います。それが医療者間のストレスにつながっていると思うんです。

システムが医療現場で活用される条件はどんなものでしょうか。

菊池先生

まず、分かりやすくて手軽であること。すぐに使えること。誰でも使えること。これは医療の現場で普及するシステムの絶対条件ですね。

峯さん

誰でも使えるツールじゃないと普及しないんです。機能を極限まで削り、シンプルでミニマムなデザインにすることが医療では重要なんです。医療者間のITリテラシーの差を感じることなく使用できるシステムじゃなければならないんです。医療現場にITを普及させるには、利用を義務付けるか、極限まで簡単にすることしかないのです。なくては仕事ができなくなれば、誰でも使うようになりますよね。そんなシステムやサービスを提供したいんです。

菊池先生

情報共有が随時システムで行われていれば、たとえばいま、インタビュー終了後に連絡が入れば、ドライバーにピックアップしてもらって現場に行くことも可能なんです。夜間の体制としては理想的ですね。

峯さん

IT化が進めば、ロケーションに捕われず医療サービスが提供できるようになるんです。いまは施設に報酬がついている。これからは人に報酬がついてくる時代が来ると思います。

写真: スマートフォンアプリを使用する菊池先生

往診の現場でシステム化の要望はありますか。

菊池先生

スマートフォンで利用ができる電子カルテがあれば便利ですね。いまの電子カルテはどれもパソコンベースで無理やりスマートフォンに合わせている。だから使いにくい。MediLine®でそのような機能は追加できませんか。

峯さん

MediLine®でカルテの下書きをして、電子カルテと連携するようにすれば、できると思います。これからMediLine®と連携できる電子カルテを探していきますね。

LINQUAで連携先電子カルテ、探していきますね。今後、Fast DOCTORとMediLine®が医療に新しい風を吹き込み、文化が創り出すことを期待するとともに、我々も普及啓蒙の点でご支援してまいります。本日はお忙しい中、お時間をいただき有難うございました。

写真: 握手を交わす菊池先生と峯さん
写真: 菊池 亮

菊池 亮
FastDOCTOR 代表
帝京大学医学部付属病院 整形外科

略歴

  • 2010年 帝京大学医学部医学科卒業。初期研修終了後、同整形外科学教室に入局。
  • 2016年 夜間往診サービス「FastDOCTOR」を設立。

資格

  • 医師免許
  • 整形外科専門医

所属団体

  • 日本整形外科学会
写真: 峯 啓真

峯 啓真
株式会社シェアメディカル 代表

略歴

2006年、株式会社QLifeの創業メンバーとして口コミ病院検索QLifeを始めとした同社のWebサービスの立ち上げに参画。
『収益を生む制作チーム』をコンセプトとして、医療ビジネスを多く立ち上げる。
2008年iPhone上陸と同時にスマートフォンの医療分野での親和性ををいち早く見いだし、添付文書Pro、医療ボードProなど医療アプリの事業化に成功。
より臨床現場に近い医療サービス企画を目指し2014年、株式会社シェアメディカル創業。