つくるCASE002
峯 啓真様
かける市川 匠
2020.04.07 公開
デジタル聴診器ネクステートと
新時代の医療教育

写真: 鷲田直輝様
株式会社シェアメディカル
代表 峯啓真様
ホームページ https://www.sharemedical.jp/
写真: 鈴木泰山様
一般社団法人リンクア
理事長 市川 匠

デジタル聴診器「ネクステート」

医療ICTベンチャー「シェアメディカル」に伺い、デジタル聴診器「ネクステート」についてお聞きしました。

峯さん(シェアメディカル)

実はネクステートはデジタル聴診器で、5万円くらいで売り出そうと思っていますが、ただモノを売って、それで終わりという商品ではなく、サービスとして次のデータビジネスを考えています。ネクステートで集まった情報を整理しながら、利用者とディスカッションしながら、従来の聴診の世界を変革したいと考えています。たとえば、集まったデータをパターンマッチングなどが行えていければ良いと思っています。

写真: ネクステートネクステート

市川(リンクア)

わたしが専門の透析の場合、シャントの聴診で活用できると思います。いまはエコーで見ることが多いのですが、聴診器でも可能です。しかし、聴診器は個人のスキルの差が大きくて、個人のスキルに依存してしまいます。ネクステートならば、個人の力量に左右されない結果が得られると思います。ネクステートを普及させるために、どんな方策を考えてますか。

実は、デジタル聴診器を普及するために、「聴診器協会」を設立します。この研究会に賛同してくれる方がスポンサーとなる仕組みです。大企業からスポンサードを受けずに、特定の利権に捕われないように、仕組みで普及できればと考えています。

市川

なるほど、会員組織で普及を図ろうということですね。大企業と組まないには訳があるんですね。とろで、最近ドクターの起業が増えていますが、どのようにお考えですか?

写真

ドクターが起業する場合、メリット、デメリットであると思います。医師は何らかの組織に属していますから、学閥だったり、医局だったり、学会だったり、そういった医療の序列の中で生きているために、色がつきやすいんです。ある医師に協力を打診したら、そういった背景から組めないと言われたんです。

市川

学閥、医局などが結局、阻害要素となるかもしれないということですね。 ところで、プレスリリースをして反響はどうでしたか?

ネクステートはベテランの先生の方が興味を持っているようです。また、薬剤師からも問い合わせが来ています。しかしながら、薬剤師が聴診器を使うと、「医師になりたいのか」なんて指摘されることもあるようで。薬剤師の使用は影で行われがちなんですが、ネクステートは個人の力量が左右されにくいので、薬剤師も使いやすいのではないかと思います。

Webで緩やかにつながる時代

聴診器業界の問題点は?、どうやって普及していきますか?

聴診器の技術を教えるカリキュラムがあまりないんです。そこで、メディアミックスで教える環境を提供しようと考えています。いまも医療系出版社からテキストを作りませんかという話があります。Webのeラーニングと出版の融合にチャンスを見出そうとしているのかもしれません。

市川

私がリンクアで考えている学びのサロンも、そういった考えからです。医療界で双方向の学びの場を作りたいと考えています。

例えば、クラウド医局が上手く行こうとしている。それは診療科程度のくくりにしているから。明確に細かく区切っていないから。いまはWebで緩やかにつながる時代なのかもしれません。

写真
市川

最近、様々な医療向けの会員サイトが立ち上がっていますね。そのサイトそれぞれが、どのような会員の仕組みを作るか悩まれていると思います。

Webで会員組織を立ち上げる上で、重要な視点ですね。今は何人会員がいるかじゃなくて、何人アクティブユーザーがいるかが大切です。そうしないとレビューも口コミも増えていかないし、信憑性がないんです。

市川

たしかに、キャンペーンをやるときだけ、アクティブになるなんてケースも多いですね。レビューも専門家じゃないから、分かりにくかったり。

ライターやイラストレーターなんかも医療の世界にはあんまりいませんよねいないよね。実は大きなチャンスがあるのに。

市川

一般的な、医療がわからない人が書いた記事は誤解も生まれやすい気がします。どうも、どちらかに肩入れしすぎていて、中立性を感じない。そういう人たちは、おそらく行動変容はしない。私は医療従事者が書くなら、書く意味があると思う。もっと医療従事者が書けるといいんだけど。
また、最近コーチングなんかも、コンテンツとして医療では面白いんじゃないかと思っています。そこでも思うんだけど、コーチングってたくさんの流派があって、どれが正しいか分からないんです。結局、誰かに倣いたいときに、その信用ってどこにあるんだろうと考えて、やっぱり太鼓判(エビデンス)がいるんだと思う。

ネクステートが
コミュニケーションツールになる

ネクステートはいつくらいから発売開始ですか?

今度、ネクステートのお披露目で、CPA(https://doctokyo.jp/cpa2019/)のイベントにも出ます。そこで、予約を開始しようと考えています。1台5万円で売るだけではなくて、月額性も考えているので、使用量をカウントできる仕組みを考えています。

写真
市川

医療業界はお金の出所が難しいですよね。個人からとる、病院からとる、なかなか悩ましい問題です。製薬メーカーがスポンサードするということも考えられますね。使う側に負担感をなくしてあげる必要がある。いままでの当り前の常識を変える必要がある。

別に新しい診察手段を作るわけではないんです。そもそも、聴診器を長く使うと耳が痛いというニーズから出てきた商品です。デジタル化することで、性能は格段に上がる。すごく聞こえるようになる。

市川

わたしが所属する柴垣医院でも購入しようと考えています。患者さんに聞かせるのにも非常に便利。現場のやれない、出来ないという言い訳を許さない為のツール(笑)。

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実は訪問看護師さんからすごく興味を持ってもらっているんです。

市川

当院でも在宅をやっていますが、その中で看護師は医師に伝えたがっているのに、なかなか難しいと感じることがあります。

ネクステートは聴診データを録音、共有できるので医師へ伝えるすべとなると思います。ネクステートがコミュニケーションツールになるんです。

市川

訪問看護は一人だから、本当に必要だと思う。夜間の施設での看護でも使えると思います。

ネクステートが普及すれば、例えば、肺炎でCTを撮るなんて、お粗末なこともなくなるんです。無駄な検査がなくなるといいなと思います。

医療における教育の在り方
知識にお金を払う時代に

市川

これから医療の教え方も変わっていくと思います。従来の徒弟制度、背中を見て教えるという方法は、今の時代は通用しない。目に見える形で教えなくてはならないと思います。 また、本当に価値あるものにはお金は生まれる。そういう仕組みが作れればいいと思います。

看護師がネクステートを使うと、医師が楽になる、だったら、医師が購入して、看護師に配るという流れもあるかもしれませんね。

市川

そこで、AIの時に生まれたように、仕事が取られるなんて、ナンセンスな発想は勘弁して欲しいですよね。変われない人たちが追いやられる社会にしないと。

知識を拡張するための「AI」があるんです。「AI「がもたらす変化を明確にしなくてはならないと思います。

市川

日本人の物や知識に対する価値観が、どんどんおかしくなっていっていると思うんです。マンガもしかり、音楽もしかり、無形資産がどんどん無料化している。知識はタダじゃないと思うんですが。

知識の交換をどうするか。知識と知識、知識とお金、いくらでもやり方はあると思います。

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市川

知識と言えば、学ぶ仕組みを作る時に、講師にどう利益を還元するかも大切だと思います。

教育は近いし、知識をどう交換していくか、使い続けることで価値がうまれます。サブスクリプトという考え方が大切です。1スポンサーを付けることでは不幸になると思うんです。

市川

なんで医療クラウドファンディングってあんまないんだろうね。医師個人からお金が集まる仕組みは作れると思うんですよね。

医師の投資組合を作っても面白い。しかし、マニアックすぎるものを作ってしまうケースもある。実は今回の取組のように既存のアップデートから始めても良いと思う。AIがまだ遠いのかもしれない。医工連携がもっと進めば良いと思います。

市川

中には補助金でものすごくマニアックなものを作っていることがありますね。

作りたいものを作っているとそうなる。ベンダーがしっかりいないとモノはできない。 ドクターは聴診ができなくなると引退を考える。ネクステートがあれば医師寿命が延びると思います。

市川

峯さん、本日はありがとうございました。大変勉強になりました。ともに、医療界発展のために盛り上げていきましょう。

写真: 峯と市川