鷲田 直輝様
鈴木 泰山様2017.02.08 公開PKC構想を発展させ
医療分野のICT化を
促進させる
鈴木 泰山様2017.02.08 公開PKC構想を発展させ
医療分野のICT化を
促進させる
医学博士 鷲田直輝様
ホームページ | http://www.med.keio.ac.jp/ |
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取締役 鈴木泰山様
PKC構想※について
※PKC構想とは…
慶應義塾大学腎臓内分泌代謝内科が取り組んでいる医療連携体で、ICTを活用した在宅医療支援システムのこと。ICTネットワークで結びついている次世代型地域社会(高齢者-介護者、医療機関、訪問看護ステーションならびに介護事業所を結んだ、患者家族見守り援助システムなど)の実現化を目指す。
PKC構想のきっかけについてお聞かせください。
在宅医療、透析の領域で、腹膜透析が我が国ではほとんど普及していません。今後、医療費を抑えるためには効率化が必要です。そこでICTを活用したいと考えました。まずは慶應大学の関連施設でVPN環境のもと医療情報をシェアすることを考えたのです。まずは、透析医療でモデルケースを作りたいと考えました。
CRI・ミドルウェアでは、これまでは医療以外の分野でICTに取り組んできましたが、他分野で培った技術やノウハウが医療・ヘルスケア分野で活かせると考えました。本業のミドルウェア技術は、ゲーム業界でサウンドや動画システムを作っています。これらの技術をベースに、医療・ヘルスケア分野で、世の中に役立つお手伝いができるのでは、と考えたのです。
透析医療は慢性疾患のため、特別な緊急処置が常に必要というものではありません。そこで、長期的視野に立って網羅的に管理できるシステムが必要と考えました。また、透析医療は在宅医療と高度医療という組み合わせですので、そこをICTで繋げることができると思います。
医療分野におけるICT化への課題
医療分野でICTは普及が遅れていますが、特に遠隔医療ではICTの技術が活かされると思うのですが・・・。
同感ですね。今後高齢化が進み、介護予防や疾患予防をも包含した慢性疾患管理が重要となり、情報が継続的に蓄積される慢性期分野では活用可能性が高いと思います。
医療の分野では、総論賛成でも各論反対が多く、慎重に進めるべきことやむを得ませんが、何しろ、ネガティブ要因への対応に時間が掛かります。ICTの技術は大きな可能性があるのに・・・。
医療分野では、前例という突破口を作らないと認めてもらえませんし、進んでいきません。そこで、外国での実績を拝借しながら進めることも一法です。
ICT化を進めるためには、医療関係者がみな、『変わるんだ、変えるんだ』という覚悟を決めなくてはならないのではないでしょうか。
たしかに、医師や医療業界は保守的な部分があると思いますね。それこそがICT化が医療分野で進まない大きな原因かもしれませんね。現在の状況を変えようとするエネルギーが必要なのだと思います。
遠隔地の診療を可能にする
「シンクロ診療」
PKC構想の取り組みについてお聞かせください。
PKC構想を進める中で、シンクロ診療がはじまりました。大学と現場(訪問看護ステーション)でのリアルタイムでの情報共有に取り組み始めました。
※シンクロ診療…大学と現場をビデオチャットでつなぎ、遠隔で画面越しに指示や相談など情報共有を図る仕組み。距離が離れていても、現場で診療に関わることが可能になる。
現在、ビデオチャットは様々な仕組みやインフラが整備されています。いまや一般的な技術です。まずは、この技術を活用すれば、リアルタイムでも録画でも遠隔地で診療を始めることができます。実証実験から得られた改善を積み重ねれば、今まで以上に医療のブレークスルーが図れると思います。
シンクロ診療を進めるうえでの問題点は何かありましたか。
シンクロ診療では、大学と現場が一体になってビデオチャットを通して、診療に取り組むため、例えば訴訟の時にだれが責任を取るのか、という指摘を受けたことがありました。
診療によっては現場の医師の裁量権を認める自由度もないと良い医療を提供できないこともあります。ただ、慢性疾患に対する診療については、様々な意見を取り入れながら、さらに良い診療方針を提供できる時間もあるということも事実です。そのため、あくまで現場の主治医に裁量権があるのですが、効率的に診療についての情報交換ができる仕組みを作ることで、主治医や患者、家族をサポートし、医療を発展させることを考えています。
シンクロ診療では、大学と現場で意見を出し合いながら、最善の患者サポートが行えます。セカンドオピニオンとしての活用もできます。遠隔地で気軽にカンファレンスができるのはメリットだと思うのですが、そういった課題も、法整備など解決まで、そう遠くないと思えます。
グループ医療機関との連携が
PKC構想の発展につながる
医療ICTを今後どのように活用していきますか。
ICTを医療分野の効率化に積極的に活用したいですね。まずは、PKC構想発展させていきます。将来的には、シンクロ診療と電子カルテの融合などにも取り組みたいと考えています。まずは、地域のグループごとの連携から始めるのが良いと思います。
連携を進めていく中で、患者さんの同意を得ているからといって、何でも繋げて良いものかという問題も今後議論になると思います。この部分も医療関係者による十分な議論と法整備で進められると期待しています。
そのため、いまのところはグループ医療機関として慶應大学からはじめました。この取り組みは、今後赴任予定の『国際医療福祉大』のグループ医療機関でも継続していく予定です。まずは、電子カルテの統一を行います。そうすることで、ビッグデータの分析が可能になります。実際、アメリカ、ヨーロッパの一部の診療ではクラウドでの医療情報の連携ができています。しかし、リアルタイムではなく、後で連携するスタイルです。わが国でも現時点で、クラウドでの遠隔診療を厚労省が認める方向で検討しているという情報もあります。
遠隔診療については高度なセキュリティ環境の確保が必要とされています。今回のプロジェクトでも、VPNでネットワークを構築しました。それでも、VPN網の構築には費用がかかるため、この部分のコストを補う仕組みがなければ、誰もが使える仕組みとはなりません。現在、遠隔診療の評価が議論されており、今後保険点数がつくのではないかと期待しています。
鷲田先生、泰山さん、ありがとうございました。
シンクロ診療の取り組みが、さらに広がっていくことを期待しています。そのためには、取り組みについて認知を図る必要があると思います。LINQUAでも、新しい技術の普及活動を今後もご支援できればと思います。
鷲田 直輝慶應義塾大学医学部 医学博士
取得資格
- 日本内科学会認定医・指導医・総合内科専門医
- 日本腎臓学会専門医・指導医
- 日本透析医学会専門医・指導医
- 日本透析医学会評議員
- 日本腹膜透析医学会評議員
- 慶應義塾大学博士(医学)
略歴
- 1999年 広島大学医学部医学科卒業
- 1999年4月~2000年5月 京都大学医学部付属病院にて内科研修
- 2000年6月~2007年7月 大阪府済生会中津病院勤務
- 2005年4月~2007年8月 大阪CAPD研究会 幹事
- 2007年9月~2008年3月 慶應義塾大学医学部内科 腎臓内分泌代謝科 助教
- 2008年4月~2010年3月 慶應義塾大学医学部 特別研究助教
- 2010年4月~ 慶應義塾大学医学部内科 助教
- 2011年4月~ 東京CAPD研究会 幹事
- 2012年8月~ 慶應義塾大学医学部 特任講師
- 2014年4月~ 日本透析医学会評議員
- 2015年11月~ 日本腹膜透析医学会評議員
- 2016年5月~ 慶應義塾大学医学部 特任准教授
- 2017年4月~ 国際医療福祉大学医学部医学科腎臓内科学講座主任教授予定
鈴木 泰山株式会社CRI・ミドルウェア 取締役
略歴
- 1987年 千葉大学理学部数学科卒業
1987年 株式会社CSK総合研究所入社 - 2015年 株式会社CRI・ミドルウェア 取締役 医療・ヘルスケア事業 管掌(現任)