遠隔診療の動向

2015年8月の厚労省の通知により、実質解禁された「遠隔診療」。2018年の「診療報酬改定で遠隔診療を評価する」との首相発言もあり、その評価の行方に注目が集まっています。
従来、へき地等に限定的に解禁されていた遠隔診療を、文言の解釈を改め、広くすべての医療機関で可能であることを明確にした通知が2015年に出されました。医療界では従来の「対面診療の原則」が一部緩和され、新たな「診療スタイル」が創出されるのではないかと考え、多くの企業がこの分野に参入しています。
また、2016年11月の同会議では、遠隔診療の診療報酬上の評価を対面診療と同等にすることを求める意見が上がり、安倍首相も「遠隔診療を進め、質の高い医療を実現する」と言及しています。これをきっかけに、2018年診療報酬改定で「遠隔診療」が評価されるということが、あたかも既定路線のようになっています。
そこで、改定前に不謹慎かもしれませんが、遠隔診療は医療界にどんなインパクトをもたらすのかを私なりに予測してみたいと思います。

遠隔診療によるメリット

患者さん 医療機関
  • 完全予約制のため、待ち時間なく受診できる
  • 予約さえすれば、好きな時間に受診できる
  • 診療所に行かずとも家や職場に居ながらにして受診できる
  • 遠く離れた医療機関でも、一度受診していれば、距離の制約なく受診できる
  • 会計もカードででき、振込や支払いに行かなくても良い
  • 家などに居ながらにして処方せんが入手できる
  • 慢性疾患の患者さんの継続受診につながる(離脱防止)
  • 外来受診の一部を移管でき、待ち時間の緩和につながる
  • 遠く離れた患者も取り込むことができ、診療圏が拡大する
  • 患者さんの満足度が向上すれば「集患」につながる
  • 診療報酬で高く評価されれば、収益アップにつながる(未定)

このように、医療機関のメリットは患者さんに比べると弱いように感じます。診療報酬で高い評価がない現在では、「患者さんのために遠隔診療を始める」という考えが一般的だと感じます。また、収益が見込めないうちは、短時間で多くの患者さんを診察する必要があり、限られた時間内に問診、診察、カルテ記載を完了する必要があり、この部分にもスピードアップのための工夫が必要となります。
しかしながら、遠隔診療が2018年度の診療報酬改定である程度高評価されれば、売上面でのメリットも享受できるようになるため、その動向に期待が集まっています。

遠隔診療の普及の先に見えるもの

今後、遠隔診療が普及することで、どのようなインパクトが考えられるでしょうか。まず、遠隔診療は時間がかかるかもしれませんが、外来・在宅・入院を補完する新たな診療スタイルとして定着していくと考えられます。今後、患者さんの診療スタイルも変わってきて、「移動せずにサービスを受ける」というスタイルが定着するとともに、遠隔診療の有無が患者さんの医療機関選別につながるかもしれません。
また、今後普及が見込める「電子処方せん」や「電子お薬手帳」と組み合わせることで、患者さんにとってのメリットはさらに高まると予想します。また、在宅で行える様々な医療機器と組み合わせることも、リアルタイムのモニタリングが行えるようになり、医療の質向上に貢献できるのではないでしょうか。
さらには、処方の配達サービスが普及することで、ネットショッピングのような形態が生まれ、薬局業界には大きな変化をもたらすでしょう。他業界からの参入が始まる可能性が大いにあります。