ひろめるCASE001
川島 史子様かける宮本 研様2016.06.10 公開在宅医療の現場で選ばれる条件。
カルテの行間を読めるスタッフをそろえた
遠隔コンシェルジュサービス

写真: 川島史子様
株式会社クラウドクリニック
代表取締役 川島史子様
ホームページ http://cloudclinic.jp/
写真: 宮本 研様
医療法人社団明洋会柴垣医院
自由が丘副院長 宮本 研様
有限会社オフィス・ミヤジン 専務取締役
ホームページ http://www.shibagakinaika-cl.jp/
http://www.kenmiyamotomd.jp

サービス開発のきっかけ、
導入のきっかけ

川島さん

わたしは医療コンシェルジュとして、地域連携の前方支援や、電話応対、診療の補助、紹介・逆紹介の補助などを行ってまいりました。2008年には「医師事務作業補助者体制加算」が新設され、医師事務作業補助者の育成、専門部署の立ち上げなどをサポートしてきました。医師事務作業補助者の育成を行う中で、医師の書類の多さを目の当たりにし、先生が本当にしなくてはいけない仕事に集中する体制をサポートしたいと考えるようになりました。

また、父親の末期がんの療養後、在宅医療という存在を知りました。在宅医療の現場では居宅という独特な環境の中で、いまだに紙カルテが大半です。また、在宅医療は書類も多く、医師に大きな負担を強いています。わたしがいままで経験してきたことを在宅医療で生かせると思うようになったのです。

宮本さん

病院は職員数が多く、事務方のフォローによって、医師は業務をこなせます。しかし、在宅は職員が少ない。一人の医師がマルチタスクで仕事をこなすしかないのです。在宅医療の現場の課題は、少ない職員で膨大な事務作業をいかにこなすかです。

当院では、在宅医療を始めるに当り、最初は透析クリニックのスタッフがサポートする予定でした。他の在宅クリニックにも見学に行き方法を探りましたが、どこも少人数で業務を行っているのが実情でした。そんなときに、川島さんの「クラウドクリニック」に出会ったのです。在宅医療は少人数で膨大な作業を行う。また、時間の制約もある。クラウドクリニックの在宅事務をアウトソースするサービスが活用できると思ったのです。

クリニックの現場で支持される
サービスとは?

写真: クラウドクリニックのサイトトップ画像

Cloud Clinic(クラウドクリニック)

川島さん

在宅医療でのサービスを考えたときに、最初はヒトの派遣を考えました。しかし、すぐに人材紹介業では対応できないことに気付きました。クリニックごとにやり方が違うため、ただヒトを派遣するだけでは対応できないと感じたのです。

そこで、発想を転換してクラウド技術の活用を考えたのです。クラウドタイプの電子カルテを利用できれば、遠隔で在宅事務をサポートできるのではないかと。最初は、パッケージでのサービス提供を考えていました。しかし、現場の細かいニーズを応えるには、クリニックごとのカスタマイズが必要でした。わたしどもはベンチャーですから、スピード感良く対応できます。クリニックごとに要望を聞いて対応していくことにしました。

宮本さん

クリニックごとに内容が異なるのは、医師のこだわりによるものです。医師が日々の業務をこなし、その試行錯誤のなかで残っていくものがこだわりなのです。医療向けにサービスをするには、画一的なサービスでは通用しません。個別対応だからこそ、医療の現場から支持されるのです。

個別のオーダーに応えてもらえるならと「クラウドクリニック」を選びました。世の中には色々な医療機関があります。在宅医療におけるクリニックの差は、医師の技術の差よりも、事務方に本当の差がある場合が多いと思います。これは運用(オペレーション)の差の部分が大きいのでしょう。現在のクリニックはベンチャー企業と一緒です。刻々と変わる時代に応じるためには、昔ながらの方法では通用しません。ノウハウをどんどん進化させ、ベンチャー精神を持っていないと対応できないのです。

川島さん

クリニック向けのサービスは、「ベンチャースピリッツ」「パートナーシップ」でサービスを作って行く必要があると感じます。医師のニーズから新しいサービスが次々と出てきます。

宮本さん

サービス提供する企業も、医療現場にいることに本質的意味があると思います。バックヤードの仕組みは医療行為そのものを変えるわけではありませんが、バックヤードが効率的に回ることで、全体的には医療サービスが最適化されます。これを肌感覚で気付くためにはやはり、いつも現場に関わってサービスを考えなくてはダメなんです。

女性らしい働き方、
働き場所を求めて

川島さん

医療の現場では多くの女性が働いています。わたしが会社を起業する際にもうひとつテーマとして考えたのは「女性らしい働き方」です。医療に従事する女性は、常に医療現場にいたい。第一線にいたいと考えています。しかし、結婚や出産、子育て、親の介護などで女性は働き方を変えなくてはならない時期が来ます。そうなると、短い時間しか働けません。そんな女性の働く場所を作り出したいと考えたのです。

宮本さん

「クラウドクリニック」は、クラウド経由でリアルタイムに医療に関わっていけるのでいいですね。このサービスは、在宅分野すべてに広げることができるのではないでしょうか。たとえば、介護でも有効だと思います。このサービスを利用すれば、医師に余計な負荷がかかりません。プロ選手のマネージャーのように、医師にもエージェント組織が必要だと私は考えています。医師本人ができないことをサポートする。メジャーリーグは、本人のみならず家族すら面倒を見てくれます。クラウドサービスが私たちの裏方として、常にサポートいただける安心感は大切ですね。

川島さん

「クラウドクリニック」は、医師との二人三脚で、寄り添って行くことで、ともに成長できると思います。医療現場で働くことのやりがいは成長実感にあります。経験の増加を肌感覚で感じられるんです。私どものスタッフも、わからないことを見つけるとうれしそうに調べています。また、当社には医療顧問がいるので、いつでも聞くことができます。サービスを医師と二人三脚で作っているのです。

宮本さん

医療教育は見学や実習のチャンスが多くあり、その根幹に「次の人を育てる」という考え方があります。また、自分の組織だけ良ければよいという考え方は許されません。意外なほど、相互にノウハウを見せ合って切磋琢磨する伝統があります。在宅医療は地域密着型ですから、そういったノウハウの共有が起こりやすいのです。

川島さん

そのような風土のおかげで、事業を立ち上げる際、医療の現場の見学にたくさん行くことができました。すごくオープンでした。

マーケットイン、
マーケットアウトの発想

宮本さん

医師は、医療現場をきちんと分かっている人からしか、モノもサービスも買いたくありません。医療向けの商品には、プロダクトアウトではなく、「マーケットアウト」同士が手を組み、医療現場をより良くしようという発想がないといけないのです。

遠隔診療はオンコール体制をサポートできます。この技術は在宅ビジネス全般でもっと活用できるのではないでしょうか。在宅医療の先進的な開発グループは、バーチャルリアリティを活用しようとしています。

川島さん

サービスを企画しているときに、「電子カルテは競合がたくさんいるよね」と否定されることがありました。しかし、現場に行くと、医師が求めているのは電子カルテではなかったと気付きました。企業の間では、ビジネスとしては難しいと言われましたが、現場では支持されつつあります。

宮本さん

これまでは、ドクターと医療事務のがんばりで何とかなってきました。しかし、それは持続的ではありません。アウトソーシングを用いることで、持続的な医療サービスが提供できるのだと思います。

電子カルテを始めとする医療ICTは、あくまでも目的を達成するためのツールでしかありません。ヒトが組み合わさったサービスだからこそ、マーケットのなかのニーズを正確に把握でき、素早く解決できるのです。「クラウドクリニック」はだから選ばれるのだと思います。

川島さん

システムとサービスをつなぐ手間。人がそれをする。私たちのサービスはコンシェルジュが商品なのです。

宮本さん

リアルタイム性は人間が優れています。医療現場で見たこと、それをノウハウ化する人間の英知。経験がコンシェルジュのレベルアップにつながっています。「クラウドクリニック」は、この人の決め細やかさで選びました。人間の機微に触れるには人工知能では無理で、ハイテクよりも大切なのはローテクなのです。

川島さん

そういえば、ハイテクを好む先生ほどローテクでもある弊社に関心を持っていただけます。そういった理由なんですね。

宮本さん

我々は医療の現場を分かっているヒトにサポートして欲しいのです。医療は常にミスがつきものですし、それはひとの命に直結する。医療は第三者によるプロのサポートが必要と考えています。業務の効率化は、患者さん、つまり利用者を守り、在宅生活の安全を保つのです。

川島さん

私どもの理念も「医師をサポートすることが患者さんのより良い診療につながる。本人が望む、より良い医療」です。カルテからは、先生の気持ちが読み取れます。先生と同じ気持ちでサポートできます。想像力が人間の最大の能力だと私は思っています。

宮本さん

私が研修医の頃、カルテを書く過程で「日記を書くな。医者の思いで書くものではない」と厳しく指導されました。「誰が見ても分かるように、そしてカルテは患者のものだ」と上司から言われました。カルテは行間を読む必要があるのです。行間から想像することで、担当した医師の熱い思いが組みとれるのです。わたしたちは、医療ICTであってもカルテの行間を読み取ることができるサービスを求めているのです。どうか、医療向けサービスを開発される方は、この本質をしっかり見て欲しいと思います。

写真: 川島 史子

川島 史子
株式会社クラウドクリニック代表取締役

略歴

  • 日本福祉大学卒業後、病院でソーシャルワーカーとして勤務。
  • 2006年日本医療コンシェルジュ研究所に協力し、医療コンシェルジュ資格認定制度を立上げ、医療コンシェルジュの資格を取得。
  • 名古屋大学医学部附属病院の共同研究員として、医療コンシェルジュの効果について研究。2007年ダスキンヘルスケアに入社。
  • 医療コンシェルジュサービスの構築・開発・営業を担当。
  • 全国約50の医療機関でのマネジメント経験を有し、知識・経験と人脈を形成。日本医療コンシェルジュ研究所特別顧問として、
  • 医師の事務をサポートする医師事務作業補助者の養成を行い、創設10年で2,000名を超える人材を育成。
  • 2014年8月医療コンシェルジュサービス提供会社として、株式会社PLUS Fを設立。代表取締役社長就任。
  • 2015年12月在宅医療診療所に対する事務代行サービスの提供会社として、株式会社クラウドクリニックを設立。代表取締役就任。

実績

  • 平成24年度経済産業省補正予算「地域需要創造型等起業・創業促進事業」創業補助金採択事業 「医療コンシェルジュとしての新たな女性雇用機会の創出」
  • 平成26年度第1回「東京都地域中小企業応援ファンド」助成対象事業 「医療経営を担う人材育成で医療サービスの向上の促進」
  • 第1回デジタルヘルスコネクトビジネスプランコンテスト オーディエンス賞受賞
  • 第15回MIT-VFJビジネスプランコンテスト&クリニックスタートアップ部門ファイナリスト
  • 一般社団法人日本起業アイディア実現プロジェクト主催「第2回女性起業チャレンジ制度」ファイナリスト
写真: 宮本 研

宮本 研
医療法人社団明洋会柴垣医院自由が丘副院長兼有限会社オフィス・ミヤジン専務取締役

略歴

  • 2001年 福島県立医科大学医学部卒業。2003年 横浜市立大学医学部第二内科(現:循環器・腎臓内科学講座)に入局。
  • その後、国立相模原病院、大森赤十字病院、横浜市立大学附属病院などに勤務。
  • 2016年 柴垣医院 自由が丘に入職、4月より副院長。
  • 医師として診療にあたるだけでなく、医薬コンサルタントとして製薬企業の営業部門・MR(医薬情報担当者)の社内研修に20社以上で関わり、ヘルスケア企業・IT企業にも専門的な助言を行っています。製薬業界誌での連載、業界セミナーでの各種講演も実施。

実績

  • 日本内科学会 総合内科専門医
  • 日本内科学会 認定内科医
  • 日本腎臓学会 腎臓専門医
  • 日本透析医学会 透析専門医
  • 難病指定医