島 佑介様2017.01.12 公開超高齢社会に向けた医療制度の大変革
遠隔診療サービスで受診機会を創造する
遠隔診療サービスで受診機会を創造する
島佑介様
役職 | 執行役員 / CLINICS事業部長 |
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ホームページ | http://www.medley.jp/ |
CLINICS | https://clinics.medley.life/ |
医療制度の変化で
注目される「遠隔診療」
先生のバックグラウンドをお聞かせください
私は大病院の消化器内科で臨床をしていた際、医療現場での効率化をより進めていく余地はあるのではないかと考えていました。そこで、主に医師を中心としたリソースの有効活用とその仕組み化を進めたいと考え、コンサル会社のボストンコンサルティンググループに転職しました。その後、大学同窓の豊田先生からの誘いを受けて、現在メドレーに参加しています。メドレーは、「ジョブメドレー」という医療介護系の求人サービスに端を発した、ITの力で「納得できる医療」の実現を目指した企業です。
遠隔診療に出会ったきっかけは?
遠隔診療は、実は平成9年に一部認められていました。ごく最近までは極めて一部の状況及び疾患のみに活用できると解釈されており、多くの医師にはあまり関係ないと思われていました。平成27年8月の厚労省通知ではその適応範囲が大幅に拡大され、一気に注目されるようになりました。これほど医療制度が大きく変わるのは人生の中でもそうあるものではなく、大きな改革であると感じました。私の医師の経験、コンサルタントの経験なども含めてこの改革に役に立てるのではないかと思いチャレンジする決断をしました。
遠隔診療について、「患者は実際に会って診察しなきゃいけない」
という、懐疑的な意見もありますが…
実際私自身も全てオンラインで代替出来るとは毛頭思っておらず、一定の割合で患者に会わなければいけないというのは事実だと思います。診療科や病院にもよると思うのですが、実際に私自身の外来では現状は7-8割方の患者さんは直接対面が必要な患者さんです。例えば、「腹痛」で来られた患者さんに、いかに詳しく問診したといえどもお腹を触らずにビデオ診察で「便秘です」などとして帰すわけにはいきません。こういった場合には当然問診以外にも触診、レントゲン、採血、エコーなど病院でしか出来ない検査を何かしら組み合わせる必要があります。ただ、こういった患者さんばかりではなく、例えば病態は安定しているのに定期的に「薬をもらうためだけに来ている」という患者さんも一定数はいらっしゃるのも事実です。こういった遠隔診療でも対応可能な状態の安定した患者さんにとっては、むしろ遠隔診療を活用して通院負担を減らすことで継続的な通院をしやすくなることが非常に意義があるのではないかと考えました。
どのような患者が遠隔診療に向いていると思いますか?
慢性疾患で比較的症状をベースに経過を観察する、内服薬などの処方があり定期的に来院が必要となっている疾患を治療される患者様は幅広く対象となる可能性があります。
内科であれば、高血圧や高尿酸血症をはじめとした生活習慣病の定期処方や、便秘や花粉症といった幅広いコモンディジーズに対応可能と考えています。より専門的な疾患であったとしても、例えば私の専門範囲で申し上げますと逆流性食道炎や潰瘍性大腸炎などの寛解期などでは活用余地がありそうと考えます。さらに全国的にも発症率の低い難病となると、診療可能な医師が少なく遠方から患者さんが定期的に通院しているケースは多く見られており、より身近に診療が受けられるようになる可能性は高いと考えています。
市場を成長させ、
患者さんの新しい受診スタイルを
サポート
遠隔診療が解禁されたことで、どのような将来像が考えられますか?
遠隔診療がある程度普及してきた段階では、既存の通院患者様が新たな通院スタイルを手に入れることができるのはもちろんですが、遠隔診療を手軽に行えるようになることにより、今まで治療されていなかった患者さんが治療を受けられるようになるメリットもあると思います。
健診で「要治療」と指摘されても仕事などで多忙なため通院できていない、脱落してしまう患者さんは非常に多いと考えられます。こういった患者さんも、スマホで一部受診可能であれば継続受診できるという患者層は多いのではないかと考えています。
遠隔診療は、医療の質向上に活用できるということですね。
サービスを開始して、どのような広がりがありますか?
2016年2月にリリースして、3月にサービスを開始しましたが、私たち自身も当初の想定以上の需要があることに気付かされました。当初は内科、それも生活習慣病にほぼ絞る形かと考えていたのですが、皮膚科や精神科はもちろん、小児科、耳鼻咽喉科、整形外科、婦人科など当初あまり想定していなかった様々な診療科でご活用頂いております。
保険診療以外では、自由診療領域ではニーズ自体はあると考えていました。ただ、自由診療の場合には初診からオンラインでも行えるということもありますので、より慎重に「対面を補完する形での遠隔診療」という形を提供できるよう様々な形で工夫をしています。
今後、遠隔診療を広めるために、
ハードルとなっているものはありますか?
遠隔診療の市場を成長させるためには様々な問題があります。制度の問題もひとつのハードルです。たとえば、厚生労働省が出した「遠隔診療」の通知も、地域によっては診療所を管轄する「厚生局」や「保健所」で十分に認知されてないという問題もありました。その際に、厚生局や保健所と十分にコミュニケーションをとって、厚労省の通知の内容などを説明するという場合もありました。
また、「遠隔診療」は診療報酬点数で現在算定できるのは、主に「電話再診料」「処方せん料」となっており、各種管理加算などは一律算定できないとなっています。こういった加算に関しても、しっかりと議論を積み重ね、対面診療と同等の診療が出来る場合にはそれなりの点数として評価されるようになればさらに追い風になると考えられます。そのためにも現状は着実に「患者さんのためになる」形で使われ、可能ならばエビデンスを構築していくことが重要と考えています。
医師と共に構築してゆく
遠隔診療サービス
現在、世の中に遠隔診療サービスは多くありますが、
「ここは違う」という他社との違いはありますか?
いくつもありますが、非常に重要な点が2点あります。1つは徹底的に作り込んだシステム自体の完成度です。メドレーは臨床をよく知る医師が6名常勤しており、当初のシステム設計段階から医師が全面的に関わっています。また法令面でも抜け漏れがなく、厚労省などの意図をしっかりと汲み取りつつサービスに落とし込んでいるものはなかなか他で真似ができないものと自負しています。
もう1つはアフターサービスです。ただシステムだけを販売するのでは片手落ちと考えていますし、広まってくれば真似をしてくるところもあるのではないかと考えています。医師にとっても、スタッフにとっても、患者にとっても全くもって新しい医療体験を導入するわけですから、当然いままで活用されていたシステムとどのように融合させてオペレーションを構築していくかが非常に重要となります。
弊社では非常に独自のコンサルティングチームとも呼べるチームが存在し、各クリニックの実情に合わせた案内方法や活用方法などを一緒に医師やスタッフと考えながら二人三脚で進めていきます。お客さんに「そこまでやってくれるんですか」と言ってもらえることも1度や2度ではありません。
医療現場のことを理解し、ニーズをくみ取るために、メドレーには医師が6人、そして法律的な対応のために弁護士が2人勤務しています。また、お客様にはコンサルタントが一人ひとり付いてサポートを行っています。サービスを利用する上での様々なハードルや不安を解消するために、最大限のサポートをしたいと考えているからこそ、そのような手厚いサービスを行っているのです。このサポート体制は絶対に他社にはできないと思いますし、今後も真似できない部分だと思います。
スマホで診察を受けられる医療サービス「CLINICS(クリニクス)」
「医療関係者の力でつなげる・ひろめる・つくる展示会」でもサービスを紹介
医師とコンサルタントが二人三脚で遠隔診療を構築する。
まさに医療サービスそのものですね。
遠隔診療は始まったばかりのサービスです。乗り越えなくてはならないハードルもたくさんあります。制度面もそうですが、ただパンフレットを患者さんに渡しただけでは予約がなかなか入らないという問題も最初のうちはあります。そのようなハードルを利用いただく医師と医院のスタッフと一緒に考え、ひとつひとつ改善していく。それこそが我々の最も大切にしているスピリッツです。遠隔診療の市場が今後拡大し、これまで病院にいけなくても、様々な理由でいけなかった方が便利に利用いただけるようになり、医療の質向上に貢献できるよう、今後もメドレーは取り組んでまいります。
島先生、本日は遠隔診療の普及への思い、本当にありがとうございました。
わたしどもも全力でご支援してまいります。
今後ともよろしくお願いいたします。
島 佑介株式会社メドレー
執行役員 / CLINICS事業部長
執行役員 / CLINICS事業部長
略歴
- 2009年東京大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院での初期臨床研修を経て、日本赤十字社医療センターで「消化器内科」を専攻。その後ボストンコンサルティンググループに入社し、製薬企業における製品戦略の立案や、病院を含めたヘルスケア領域における経営改善などのコンサルティングを経験。
- 2016年株式会社メドレーに参加。