ひろめるCASE004
野本 真由美様2017.03.01 公開オンライン診療は医師と患者さんの
心をつなぐ『お守り』になる

写真: 野本真由美スキンケアクリニック 院長 野本真由美様
野本真由美スキンケアクリニック
院長 野本真由美様

野本真由美スキンケアクリニックは、新潟市で美容皮膚科医療を行っており、美容皮膚科学、抗加齢医学、漢方医学を三本の柱に、患者さんが抱える皮膚の悩みの改善、解決、そして予防に取り組んでいる。2017年4月には開業10年目にして、銀座4丁目に2店舗目を開業する予定だ。銀座の店舗では、現在世界で展開している「皮膚の健康から美容医療を考えるスキンヘルスセンター」の役割を担う。

ホームページ http://www.mayumi-beautifulskin.com/

オンライン診療の取り組み

現在、新潟のクリニックはドクター3名体制で診療を行っており、患者さんへの付加価値として、株式会社メドレーが運営するCLINICSを活用したオンライン診療を取り入れている。オンライン診療導入のきっかけについて、

「もともと欧米の事例などで遠隔診療は知っていたので、以前よりオンライン診療に取り組みたいと考えていました。オンラインで診療が行える環境があれば、患者さんはクリニックに通うための距離の制約がなくなります。患者さんはいくら離れていてもクリニックに通えるようになるのです。その結果、受診へのハードルが低くなります」

と野本先生。

同クリニックには毎日多くの皮膚の悩みを抱える女性が受診している。野本先生は、

「女性が通院できなくなる理由に、たとえば夫の転勤で引越しした場合や、出産した場合などがあります。こんな時、本当は継続的に通院したくても、通えなくなってしまうのです」

と継続的な受診ができなくなる理由は、女性ならではの問題もあるようだ。

写真: クリニック内を紹介する野本さん

オンライン診療が
患者さんの受診機会を
創出する

オンライン診療の取り組みについて、野本先生は

「オンライン診療は、患者さんへの付加価値としては最高のサービスだと思います。スマホがあればどこでも受診が可能になりますから。海外に薬を送ってくれませんかという問い合わせもあります」

現在は、法的な問題で海外へ自由に薬を処方することはできないが、その部分をクリアできれば、海外転勤などでも、継続的な受診が可能になる。

また、天候による受診の障害についても、

「新潟のような雪の多い地域では、天気に左右されずに診療を受けられるオンライン診療は大きなメリットがあります。大雪の時は山間部などでは、どうしても通えませんから。当院でオンライン診療を行った一人目の方も、雪の多い北海道の方でした」

オンライン診療が患者さんとの物理的な距離を縮めることで、野本先生の診察が受けられる機会を創出しているのだ。

「クリニックが遠いと、1回目は受診できても、2回目は近所の近いクリニックとなりがちです。これでは継続的な治療ができません。オンライン診療があれば継続的なフォローができますから、医療の質も患者サービスも向上すると思います」

継続的診療を阻害する原因が「距離」であるならば、その「距離」をゼロにするオンライン診療は非常に有効なスタイルである。

待ち時間の問題にも効果

皮膚科は他の診療科に比べて、患者さんが多く待合室は常に混雑している。混雑しているクリニックの代表である。野本先生は患者さんの待ち時間について、

「待ち時間が発生するということは、医療が患者さんの大切な時間を奪っていることになります。長い待ち時間のせいで、患者さんは次回も持たされると思って、クリニックに向かう足が遠のいてしまいます」

と、患者さんの待ち時間の弊害について話していただいた。

「オンライン診療はそのような待ち時間についても大きな効果があります」

と野本先生。

オンライン診療は、なかなか予約時間を捻出するのが難しいのではないかという問題に対しても、

「当クリニックではオンライン診療は医師が2人いて時間が重なっているときに行っています。一人は外来、一人はオンラインと。こうすることで患者さんが受診しやすくなると思います。オンライン診療は複数のドクターがいるクリニックでは取り組みやすいのではないでしょうか」

と、複数ドクターの場合はスムーズに外来とオンラインのバランスが取りやすいとのことだった。

オンライン診療は患者さんの『お守り』

また、オンライン診療における患者さんのメリットについてお聞きしたところ、

「登録をしても、患者さんがすぐに利用しなくてもいいと思います。オンライン診療が医師とつながっているという患者さんの心の『お守り』になればいいのです」

医師と患者さんが常につながっている環境を提供できれば、患者さんはいつでも受診できるという安心感が生まれる。オンライン診療で「つながっている」という心理的な効果が、医師と患者さんの二人三脚で治療に向かう関係をさらに高めていくことだろう。

写真: 野本先生

医療機関がトレンド・時代を作る

野本先生は、現在「化粧品」や「眼鏡」のプロデュースも行っている。そのきっかけは、大学病院の勤務医時代にさかのぼる。

「ある日、アトピー性皮膚炎の女性から、“私もいつか先生みたいに化粧ができるようになりますか?”と聞かれたんです。当時は自信をもって“できますよ”と伝えられる化粧品がなかった。ならば作ろうと、吸着の力でメイクするミネラルパウダーメイクの開発に取り組み始めました」

と野本先生は当時を振り返る。

当時は、皮膚の弱い女性が1日中365日安心して使えるメイクはほとんどなかったため、なかには化粧をあきらめている女性もいた。相談されたその女性のために心を込めて作ったミネラルパウダーメイクは開発から10年がたった現在では、全国300を超える医療機関で紹介されるメイク製品となり、ミネラルパウダーメイクというジャンルも一般的に知られるようになった。

「10年前にグーグルでミネラルファンデーションと検索したとき、わずか6件しかヒットしなかったのに、いまでは215万件もヒットします。10年たてば非常識も常識になるんです」

さらに野本先生は、

「医療から時代や文化を作ることができると思います。目が悪いからかけていた眼鏡を、思わずかけたくなる快適なメガネに変えることは、医療者にできることです。今後は下着やウィッグなども皮膚科の観点から開発したい。皮膚が弱いからこの下着だけ、抗癌剤で毛がなくなったからウィッグが必要という発想を、医療から変えていけると思います。」

と今後の展望について話していただいた。

オンライン診療も
10年たてば当たり前に

「化粧品もそうだったように、10年たてば当たり前になります。オンライン診療で患者さんが救われるのであれば、10年たてば当たり前になっているでしょう」

と野本先生は今後のオンライン診療の普及見通しについて語っていただいた。

「患者さんの予約を入れようと特別な対策をしなくても良いと思います。患者さんにとってはオンライン診療でつながる『お守り』を手に入れただけでも効果があります。患者さんに使ってくださいというのでは営業になってしまいます。いつでもオンライン診療でつながれますよ、という安心感を提供できれば十分なんです」

と野本先生はオンライン診療の真の意味、効果について話していただいた。

~インタビューを終えて~
遠隔診療、オンライン診療が
我が国の超高齢社会に
有効な切り札に

遠隔医療、オンライン診療は始まったばかりだ。効果も導入方法も暗中模索、誰も未来などわかるはずもない。わからないものは誰もが疑いの目を向けてしまう。しかし、実際に利用している医師にインタビューをすることで、遠隔医療がIT化の効果を最も享受できるものであることに気づかされた。

オンライン診療は患者さんの受診機会を創出し、継続的な受診をサポートする新しい診療のカタチだ。この新しい流れが我が国に定着するには長い時間がかかるかもしれない。しかしながら、外来、入院、在宅、遠隔という診療スタイルの多様化が、超高齢社会を迎える我が国にとって、医療の質向上と医療費の抑制に有効に作用することは容易に想像できる。今後の遠隔診療の普及にLINQUAでは全力で貢献していきたい。

写真: 野本先生とクリニックのスタッフの方
写真: 野本 真由美

野本 真由美
野本真由美スキンケアクリニック 院長

略歴

信州大学医学部卒業。新潟大学付属病院皮膚科を経て、美容皮膚科の勉強のため米国留学。
2007年6月、野本真由美スキンケアクリニックを開設。

資格

  • 日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医
  • 日本抗加齢医学会専門医
  • 日本東洋医学会認定 漢方専門医

所属団体

  • 日本皮膚科学会
  • 日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会
  • 日本美容皮膚科学会
  • 日本香粧学会
  • 日本西洋医学会
  • 日本抗加齢医学会
  • 日本抗加齢美容医療学会・理事、米国皮膚科学会(AAD)
  • 日本未病システム学会
  • 日本痤瘡研究会